5.デザート

 パリに行くとよく墓地に行きます。昔、モンパルナスのモーパッサンの墓を訪れて以来、パリに来る機会があるときは、時間が許す限り、どこかの墓地を訪ねることにしています。お墓に、故人の人生が垣間見え、ひとつひとつ立ち止まれば、出会いさえ感じてしまいます。コノタビは、パリ20区ペール・ラシェーズ墓地のエディット・ピアフの墓をめざしました。入り口で1.5ユーロの墓マップを手に入れて、ショパン、バルザック、アポリネールの墓をはしごして、やがて、なだらかな坂を15分くらい登った所に、ピアフの墓がありました。

《ペール・ラシェーズ墓地 彫像あり、レリーフあり(拡大できます)

 華やか過ぎず、辺りとマッチした、ほどよい大きさの花が供えられていました。先に老夫婦がお参りに来ていました。スペインから来たということで、お互い詳しい会話ができず、目で挨拶して別れました。いたわり合いながら、坂を下っていく老夫婦の後ろ姿は映画の1シーンのようで、ピアフの歌声が僕の耳には聞こえていました。墓には、レリーフあり、写真あり、彫像あり、そして人生があります。アポリネールの墓石には彼の詩が刻まれていました

《エデイット・ピアフの墓》

《バルザックの墓》

 パリは確かに変化しています。手動ドアにこだわっていた地下鉄車両にも自動化車両が導入されていました。地下鉄1号線は自動ドアです。青春時代の思い出のカフェも閉店していたり、現代的にリニューアルされたりしています。レトロのパリが好きな僕にはすこし苦手な雰囲気になってきています。


《水位の上がったセーヌ川》

 また、一方で、1月は今や懐かしのフランと新生ユーロが併存する歴史的時期でした。スーパーのレジのマダムが小銭の扱いが難しそうで、レジの行列に少しパニックになってオロオロしていたのが、かわいそうでした。あの存在に賛否両論のあったコンコルド広場の大観覧車も遂に撤去とか、いざなくなるとなると寂しいですね。残念であったのは、オランジュリー美術館はいつも閉館、セーヌ川はいつも増水というのは、イクタビ・ノ・パリの塩味になっています。リュクサンブール公園の自由の女神像もいつも海外出張中です。